十一月の勝者
霜月のプレイボールは日が落ちてビールの味はよくわからない
寒空に指先擦り合わせてもスープでなくてカツサンド買う
マウンドに立つのはひとり宿命を背負って君は軽く頷く
「大丈夫」背を押すように拍手するボール握ったこともない手で
反撃の号令はひと振りでいいホームランボール狼煙のように
歓声を上げられずとも変わりなく前世紀から振っている傘
終電の時刻を知らすアナウンス三宮まで帰れなくていい
決着のボールは落ちたレフト前、十一月の勝者選んで
抱擁は海も時をも飛び越えて託された荷を下ろすいつかだ
吐く息は白く空っぽのグラウンド ビールの似合わない冬が来る
ゆにここカルチャースクールの「ぎゅぎゅっと! 推しと短歌」という講座で作った短歌連作です。
私にとっての推しを考えた結果、忘れたくない、一番夢中になった十一月の日本シリーズ、贔屓の野球チームをテーマに作りました。
一ヶ月くらい推敲して、最初よりも良い作品が作れたと思っています。